2024年春、小林製薬が販売していた「紅麹コレステヘルプ」服用による健康被害問題がニュースとなりました。
科学的要因が未だ明確とされておらず、紅麹と名の付く他社製品の風評被害・健康食品という商品分類自体への社会的信憑性の低下等、
その波紋は広範囲に及んでいます。
6/25(火)の「時論公論」(NHK:毎週月曜日から金曜日14:50 -15:00・23:30-23:40 1日2回放送)では、このニュースを入り口に「機能性表示食品」がテーマ。
この記事ではさらに、そんな機能性表示食品を定義している食品表示法について掘り下げていきます。
そもそも食品表示法とは?
手作りの梅干しが姿を消す!?2024年5月末で終了した法改正の猶予
機能性表示食品と特定保健用食品
まとめ
そもそも食品表示法とは?
食品表示に関する法律として、元々は「食品衛生法」「JAS法(旧:農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)」「健康増進法」という3つが存在していました。
しかし各法律の目的には統一性がなく煩雑さを招いていたため、これら3法の内容を包括し、1つに取りまとめた法律を食品表示法として定め、2018年4月に施行されました。
<出典:消費者庁「食品表示法の概要」より抜粋>
平成25年に制定されて以降、加工食品に使用する原材料や食品添加物・栽培食物の生育期間中の使用農薬・遺伝子組み換え食品において表示ルールを整備し、加工製造~流通~販売が多様化・複雑化した現代社会において、安心安全な食生活を保障するために幾度となく改定がされてきました。
手作りの梅干しが姿を消す!?2024年5月末で終了した法改正の猶予
2018年6月に食品衛生法が改正されました。
「これまで行政の審査・申請が不要だった食品製造業や飲食店営業の一部が、営業許可の申請対象(許可業種)になる」が主旨です。
気になる対象業種は以下の通り。
水産製品製造業
魚介類その他の水産動物もしくはその卵を主原料とする食品を製造する営業
釜揚げしらす、干し桜えび、干物 他
※魚肉練り製品は改正前より許可業種
漬物製造業
漬物、または漬物と合わせて漬物を主原料とする食品を製造する営業
味付けザーサイ、味付けメンマ 他
液卵製造業
鶏卵から卵殻を取り除いたものの製造(小分けを含む)をする営業
マヨネーズ工場、鶏卵加工食品製造工場、ケーキ製造工場 等への出荷業者
食品の小分け業
他の製造施設等で製造された食品を小分けして容器包装に入れ、または包む営業
納豆、乳製品製造業(固形物に限る)、麺類、そうざい、味噌や醤油、冷凍食品、豆腐 他
※調理や小分け販売における小分けは除く
本改正法が施行される2021年5月31日以前に営業販売をしていた場合、2024年5月31日までに新規許可を取得する3年の猶予期間が設けられていました。
また「1施設1許可(複数の食品を取り扱う場合、その食品数分の許可申請が必要)」原則の緩和や設備基準の未達成による即時営業停止といった厳格な対応はしない等、行政側から譲歩の姿勢も見受けられます。
とはいえ、今まで自宅の小スペースで自ら持っていた知恵で漬けた梅干しや干物を道の駅・マルシェ・直売所等に卸していた方々にとっては、「法律が定める設備投資をして自宅改築をしてください」「HACCPに則った衛生管理をしてください」と言われているようなもの。
猶予期間が終了してからまもなく1ヶ月。
食中毒事故の防止強化等からの施行とのことですが、関係各所や道の駅等にどのような影響が起きているのでしょうか。
機能性表示食品と特定保健用食品
冒頭で話題に触れた紅麹サプリ、これは食品表示法においては機能性表示食品という分類でした。
近い意味の言葉としてよく聞く「特定保健用食品(略称:特保、トクホ)」がありますが、これらの違いを一言でいうなれば行政が審査するか否かです。
機能性表示食品
条件:国の定めるルールに基づき、食品の安全性・機能性に関する科学的根拠等の必要事項を、販売前に、事業者が消費者庁長官へ届け出るだけで表示が可能
特定保健用食品
身体への生理学的機能等に影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取によって特定の保健目的が期待できる旨・その食品の有効性や安全性について国へ申請・審査を受け、許可を得た場合にのみ表示が可能
機能性表示食品の申請に必要な事項の取り揃えに対しては、人によってハードルの高さの受け取り方が異なるので割愛しますが、食の安全安心を保障するための法律の中で、「機能性表示食品」のように事業者が健康に良いイメージを安易に付与できるような制度があっていいのでしょうか?
消費者側が「機能性表示食品」という言葉を安直に健康的であるとイメージせず正確に知る努力も必要ですが、今回の事件をきっかけに現行制度に何かポジティブな変化が起こるかもしれません。
まとめ
「得るものもあれば失うものもある」「物事は表裏一体」。
では何が正解なのか?
どっちがとはおそらく決着をつけることが難しいかもしれません。
ただ、時代を遡るほどに「食べることは生きること」を根底に置いた暮らしを送ってきたご先祖様がいて、現代を生きる人間が存在しているのだと筆者は思います。
その根底は崩さず今の社会ではどのように体現することが出来るのかを、行政・事業者・消費者それぞれが考えることが大切かもしれませんね。