幼少期に経験したことというのは、その後の人生に大きく影響を与えるものだ…と思う今日この頃。
筆者にとっては、宮崎駿さんが監督されたジブリ作品がそのひとつです。
先日の宮崎駿さんがマグサイサイ賞を受賞したという吉報を耳にし、久しぶりに観直したくなりました。
物心ついた頃から何回観たか分からないくらい観ているにも関わらず、飽きるどころか、年を重ねてから観るとまた違った見方や受け取るメッセージが違うんですよね。
世界的に評価されているのも、同じように何かしら影響を受けている人がたくさんいるからかもしれません。
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…はい、お待たせしました。
本題に入りましょう。
本記事で以下取り上げていく「シナぷしゅ」(テレビ東京:毎週月曜日から金曜日 7:30-8:00、隔週金曜日 17:30-17:55)は、
その独特の世界観から一部視聴者層に根強い人気があるアニメです。
しかし独特さは世界観のみに収まらず、テレビ東京としても初の試み的な意味合いを含んだアニメであり、
各所で良い意味でも悪い意味でも話題になっています。
一体シナぷしゅの何が人々を惹きつけているのでしょうか。
シナぷしゅって?
教育上の効果は?乳児・幼児に対する正しい教育方法
シナぷしゅ誕生秘話とビジネス戦略
まとめ
シナぷしゅのモチーフって?
脳には神経細胞・グリア細胞という2種類の細胞が存在しています。
神経細胞は喜怒哀楽といった感情や記憶などの情報を伝達する役目をしていて、そんな神経細胞間がやり取りを行うすき間を「シナプス」と呼びます。
教科書の改定がされていなければ、中高生になると生物分野の授業で登場しますよね。
シナぷしゅはこのシナプスが由来です。
公式サイトによると、シナぷしゅの”ぷしゅ”には以下の意味が込められているとのこと。
脳の発達につながる、
そして赤ちゃんの世界が「ぷしゅっ」と広がり、
赤ちゃんを育てるすべての人の肩の力が「ぷしゅ~」と抜ける、
ちなみにシナぷしゅは番組名であり、白い軟体生物のような見た目が特徴的のメインキャラクターは「ぷしゅぷしゅ」という名前です。
ぷしゅぷしゅの見た目は…一般的な脳細胞の図説を見る限り、筆者個人的にはニューロンが近いかなと感じます。
脳は非常に奥深い世界で未だ解明されていないことが数多ある神秘的な組織なので、”得体の知れない”というニュアンスを表現していると捉えれば納得です。
支持細胞ともいわれ、脳の神経細胞が維持発達できるような環境形成や代謝補助を行っています。
その数は神経細胞の数倍~数十倍ともいわれています。
教育上の効果は?乳児・幼児に対する正しい教育方法
どんな分野においても、秀でた若手が打ち出す「最年少記録」という言葉は人を魅了します。
また若いうちから活躍し続けることができれば、その分現役期間が長くなり、「最長/最大記録」を打ち出せる可能性も高まります。
そんな期待を胸に早期教育に力を注ぐ親御さんも多いんではないでしょうか。
その一方で「どうすればいいのか?」という壁に悩まれているかもしれません。
極論、これが絶対正解というものは存在しておらず、最先端の科学研究から導かれた結果が必ずしも正しいとは言い切れません。
特に乳児・幼児の教育にいいものはまだまだ研究段階であるため、
それぞれの親子間コミュニケーションを大いに取り、我が子が興味関心を持つものを知って経験させることが重要になってきます。
この点において、「シナぷしゅを子どもと一緒に観ることでコミュニケーションが増えた」という声は現役子育て世代の親御さんから上がっているとのこと。
製作監修に携わった開一夫(ひらきかずお)さんは東京大学大学院教授であり、赤ちゃん学や発達認知神経学を長年研究しています。
解明されていないことが多いとはいえど、第一線で研究をしている専門家が関わっているという事実は、教材に対する安心感は強いですよね。
開さんはシナぷしゅグッズのひとつである絵本『シナぷしゅ でて おいで~』(主婦の友社:2023年12月14日発売)の監修もされています。
アニメと同様、乳児・幼児を対象にしており、色鮮やかなページの中に隠れたキャラクター達を探すことにより集中力を養う効果が見込まれる知育絵本です。
シナぷしゅ誕生秘話とビジネス戦略
日本国内のテレビ局で子ども向け教育番組といえば、なんといってもNHKの印象が強いのではないでしょうか。
また長時間のテレビ等の動画コンテンツ視聴は脳に影響を与えるとして、発達段階にある幼児期は特に厳格に管理すべきという見解が世界的にも推奨されています。
世界保健機構(WHO)のガイドラインでは、乳児・幼児における「1日におけるスクリーンタイム(テレビや動画の視聴、スマートフォン操作やゲームをプレイする時間 他)」の推奨基準を以下の通り示しています。
・0~1歳児…推奨しない
・2~4歳児…1時間以内
この世界的ガイドラインに則るように、日本における一般的なテレビ視聴率調査は対象を最少4歳からに設定しています。
調査に用いられる視聴率には「世帯視聴率」と「個人視聴率」の2種類があります。
上述の4歳とは、個人視聴率の定義を指します。
・世帯視聴率…テレビ所有総世帯のうち、その放送局の番組を視聴していた世帯の割合
・個人視聴率…テレビ所有総世帯のうち、各世帯を構成する4歳以上の家族の中で誰がどのくらいの時間テレビを視聴していたかの割合
調査機関は株式会社ビデオリサーチという民間企業です。
手段も年々改良されていて、現在はPM(ピープルメータ)というテレビリモコンに内臓できるシステムが用いられています。
ちなみNHKでも独自に視聴率調査を実施しており、こちらは個人面接法・配布回収法の2つが主な手段です。
以上の背景を鑑みると、民放初の乳児・幼児(0~2歳児)向け教育番組として2019年12月に放送開始したシナぷしゅは、
世論に真っ向から挑んだプロジェクトといっても過言ではないでしょう。
しかしプロデューサーの飯田佳奈子(いいだかなこ)さんは、決して炎上商法狙いでも無謀でもなく、
テレビ業界の現状に対する想いと自身の業界経験値を持ってシナぷしゅの制作指揮を執りました。
戦略:メディア視聴の “常識” と実態との乖離
乳児・幼児のメディア視聴については上述の通りであり、多くの人にもその意識が定着しています。
近年の動向として乳児・幼児のテレビ視聴時間は減少傾向にあります。
しかしながら、スマートフォンやポータブルPCの普及や動画コンテンツの多様化の波によって崩されつつあるようです。
<出典:NHK放送文化研究所「放送研究と調査(2024年1月号)」より『幼児はテレビやネット動画などをどのように使い分けているのか』図1・図3>
子育て層は「子どもの成長に可能な限り良い環境を」という意識は持ちつつも、家事に仕事に育児にと多忙を極める中で、子どもから少しの間安心して目を離せる時間を創出できる手段として重宝されています。
実際、YouTube等の動画コンテンツでは、国民的人気アニメを模倣した “低年齢向け” の動画が何十万回も再生されています。
現代の育児に動画コンテンツは欠かせなくなっている。
自身が育児をする中でそんな現実を目の当たりにした飯田さん。
「乳児・幼児向けの良質なコンテンツとしてのテレビ番組をつくりたい」、その想いでシナぷしゅが誕生しました。
制作費:会社からの予算はほぼゼロ。資金源はほぼスポンサー
非常に挑戦的なプロジェクトであるシナぷしゅは、会社からの予算は通常の番組制作よりもとりわけ低かったとのこと。
しかし、「子ども向け商品を取り扱う企業から『アニメ番組枠にCMを出したい』という問い合わせが多かった」という自身の経験から、シナぷしゅ放送にあたりスポンサーを募ったところ大当たり。
見事スポンサーを確保に至りました。
限られた制作費ではあるものの、コンテンツのクオリティや内容には妥協したくない。
東京大学大学院の開さんに番組監修いただいたのもその証なのでしょう。
子育て層に響くようにと徹底したこだわりが、今のシナぷしゅのベースになっています。
シナぷしゅのみならず、当局の番組制作に割り当てる予算は低水準とのこと。
そのため制作費は他局の半分もしくはそれ以下に抑えられていて、一方利益を上げているライツ事業へ注力することにより、
結果会社としての資産効率が向上しているようです。
シナぷしゅもライツビジネスに力を入れていて、前述した絵本の他、
2023年Vポイントカード(旧:Tカード)の限定デザインやセット商品になったり(2023年12月~)、
ドイツの高級織物ブランドである「FEILER(フェイラー)」とのコラボ商品(2024年7月~)が発売されています。
さらには「シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド」(ローソンエンターテイメント:2023年5月放映)と映画化までされる人気ぶり。
こちらは翌2024年5月に再上映されています。
まとめ
シナぷしゅ放送中の今現在に番組対象年齢である乳児・幼児が視聴していたら、
成長してからシナぷしゅを見た際にノスタルジーに浸るのでしょうか。
そう考えると、子ども向けコンテンツは長期的な観点で他者に大きな影響を与えるものであり、
それをモチベーションの糧にしている制作関係者もいらっしゃるかもしれませんね。
シナぷしゅ公式X https://x.com/synapusyu
シナぷしゅ公式YouTubeチャンネル https://youtube.com/@synapusyu?si=9kq5yvun1QZokniC